脳梗塞の急性期における抗血栓療法
医師の診察・問診、画像検査等によって脳梗塞と診断されたら抗血栓療法が最初の選択肢となります。脳梗塞は脳動脈に詰まって発症するため、抗血栓療法が最も音本的な治療方法といえます。
抗血栓療法には以下の3つのタイプがあり、患者さんの状態によって選択されます。まず「抗血小板療法」です。動脈硬化を起こした血管は血小板の凝集・粘着が生じやすいため、血小板を主体とする血栓ができますが、血小板凝集抑制薬でこの形成を防ごうというのが抗血小板療法の目的です。
血小板凝集抑制薬にはアスピリンやチクロピジンがあります。通常、抗血小板薬は脳梗塞の慢性期や一過性脳虚血発作(TIA)に対して脳梗塞を予防するために服用しますが、アスピリンは急性期に服用しても一定の効果があることが証明されています。
しかし、日本では脳梗塞の急性期には一般的に点滴で投与するオザグレルという薬が使用されています。この薬にもアスピリンと同様の血小板凝集抑制作用があります。
続いて「抗凝固療法」です。血小板血栓によって血管が狭くなると血流が停滞してしまいます。血流の停滞が起こると血液凝固機能が促進して、フィブリンが作られフィブリン血栓が生じます。小さな血小板血栓が大きくなってフィブリン血栓になるのを阻止するのがこの療法の目的です。
心臓でできた血栓が脳へ運ばれて太い血管を詰まらせて発症する「心原性脳塞栓症」はこのフィブリン血栓が原因ですので、この抗凝固療法が選択されます。使用する薬には静脈投与するヘパリンと内服するワーファリンがあります。
3つ目は「血栓溶解療法」です。これは血栓をTPAと呼ばれる血栓溶解薬で溶かすことによって、閉塞された脳動脈を再開させ、脳卒中の症状を改善しようというものです。血栓溶解療法が成功すれば脳卒中の症状は劇的に改善し、後遺症も程度も大きく軽減されることが期待できます。
しかし、脳卒中を発症してから4時間半(2012年以前は3時間)以内に治療を開始しなければ効果を期待できないばかりか、4時間半以上経ってから治療を行うと脳出血を起こして症状が悪化する危険性もあるため、TPA投与による治療を行える医療機関は限られています。